「仏壇とともに暮らす意味」
~親の思いと、私の気づき~
私は、かつて父と母が大切に守ってきた実家を手放し、今の住まいに移りました。
そのとき、悩んだのが「仏壇」でした。
父がどんな思いでその仏壇を選んだのか、その由来もちゃんと聞いていて、
・・・だからこそ簡単には手放せませんでした。
その仏壇は決して小さなものではなく、引っ越し先に持ってくるには少し大きすぎるものでした。
お寺の方にも相談して、「小さな仏壇に変えてもいいですよ」と言っていただいたのですが、
どうしても心が納得できず……
いろんなことがうまくいかないような気がして、
結局、もともとの仏壇をそのままの形で新しい家に迎え入れました。
息子に相談したとき、私はつい「将来どうするんだろう」と不安な気持ちを口にしてしまいました。
でも息子は、
「先のことは、僕たちがそのとき考えるから。今はお母さんが思うようにしていいよ」
と、背中を押してくれました。
その言葉に救われ、私は仏壇を移す決心ができたのです。
それからというもの、
仏壇に手を合わせるたびに、心の中で仏さまと会話をするようになりました。
日々の思い、迷い、不安……いろんな感情を正直にぶつけながら、自分自身と向き合う時間になっています。
ふと、こんなことを思いました。
「どうして私が仏壇を引き継ぐことになったんだろう? 兄もいるのに……」
そう考えて、ある答えにたどり着きました。
兄はしっかりしていて、親も心配していなかったのだと思います。
でも私は、
心配で仕方がなかった存在だったのかもしれません。
だからこそ、仏壇もお墓も、私と一緒にいてくれている。
きっと、お父ちゃんもお母ちゃんも、
「この子は心配でたまらない。そばにいて見守ってやらないと。
知らない土地での生活は寂しいだろうし、せめて私たちだけでも一緒にいてやりたい」
・・・そんなふうに思って、ここに来てくれたのではないかと思っています。
そして私は、仏壇を通して毎日手を合わせる中で、
「ああ、私は今もなお、両親の愛の中で生きているんだ」
そう強く感じるようになりました。
周囲の人たちは、
「仏壇を引き継いで立派だね」と言ってくれます。
でも、私の心の中では少し違います。
立派とかじゃなくて、
「親が私を想って、ここまで一緒に来てくれた。私は今も、見守られている。」
そんなぬくもりと愛を感じながら、今日も仏壇の前で手を合わせています。