そばにいてくれる両親のぬくもりー 仏壇が教えてくれたこと

「仏壇とともに暮らす意味」~親の思いと、私の気づき~

人生には、ふとした瞬間に「心の拠りどころ」が必要になる時があります。

それは大切な人との別れだったり、新しい生活への一歩だったり。

私が実家を離れ、新たな住まいで暮らし始めたとき、

そんな「拠りどころ」のひとつになったのが、両親が大切にしてきた仏壇でした。

 

父の想いが宿る仏壇

その仏壇は、かつて父が自ら選び、家に迎え入れたものでした。

木のぬくもりが感じられる立派な仏壇には、父の思いや信念が込められているように感じられました。

実家を手放すことが決まり、新たな生活を始めるにあたって、

私はこの仏壇をどうするかに強く悩みました。

引っ越し先は今よりもずっと狭く、仏壇を置くスペースも限られていました。

お寺の住職に相談したところ、

「最近はライフスタイルに合わせて、小さな仏壇に変える方も多いですよ」

と、やさしくアドバイスをくださいました。

けれど、私の中でどうしてもその選択肢を選ぶことができなかったのです。

仏壇を小さくした途端、なぜか両親とのつながりが薄れてしまうような、

大切な何かが失われてしまうような気がして,

迷った末に、私は「そのままの仏壇を新しい住まいへ連れて行く」という決断をしました。

 

背中を押してくれた息子の言葉

その選択を後押ししてくれたのは、息子の言葉でした。

私がぽろっと「将来この仏壇、どうすればいいんだろうね…」とつぶやいたとき、

息子は迷いもなくこう言ったのです。

「そのときのことは、そのとき考えればいいよ。今はお母さんが思うようにしていい」

その言葉に、張り詰めていた心がふっとゆるんでいくのを感じました。

「今、この瞬間を大切にしていいんだ」

そんなあたたかさと安心感が、私の心を包んでくれました。

 

仏壇との暮らしがくれた時間

仏壇と共に暮らすようになってから、私は毎朝、手を合わせるようになりました。

感謝の気持ち、迷い、不安、寂しさ、後悔。

そのすべてを、仏さまと両親に語りかけるようになったのです。

この時間は、誰にも邪魔されない「心の対話」のようなものでした。

ある日ふと、こう思いました。

「どうして私が仏壇を引き継ぐことになったんだろう? 兄もいるのに…」

そう自問自答を繰り返す中で、少しずつ答えが見えてきました。

 

私は、親にとって心配な存在だった

兄は、昔からしっかりしていて何事もそつなくこなすタイプ。

きっと両親も、「この子は大丈夫」と安心していたのだと思います。

けれど私はというと、少し不器用で、感情的で、悩みが多くて、

親にとってはいつも気がかりな存在だったかもしれません。

そんな私だからこそ、両親はこの仏壇を私と共に歩ませることを選んでくれたのではないかと、

今はそう思えるのです。

「この子は大丈夫だろうか… 見守ってあげたい…」

そんな両親の想いが、仏壇という形で今も私のそばにある。

そのことを感じたとき、涙がこぼれました。

 

今もなお、両親の愛の中で生きている

仏壇に手を合わせるたびに感じます。

私は今も、両親の愛の中で生きている、と。

人からはよく「立派だね」「親孝行だね」と言われることもあります。

でも私にとっては、「立派」なんて意識ではなく、

ただただ両親のぬくもりとつながっていたいだけなのです。

仏壇に向かう時間は、両親と対話するかけがえのない時間であり、

私自身の心が整い、癒されていく時間でもあります。

「お父ちゃん、お母ちゃん、今日もありがとう。ちゃんと頑張ってるよ」

そんな言葉を、心の中でそっとつぶやきながら、私は毎日手を合わせています。

 

最後に

親を亡くすという体験は、誰にとっても大きな喪失です。

時間がたっても、寂しさが完全に消えることはありません。

でも、仏壇という存在がそばにあることで、

「見えないけれど、今も両親とつながっている」という実感を得ることができます。

それは、何よりも大きな心の支えであり、日々の安心感でもあります。

これを読んでくださったあなたにも、

ふと心があたたかくなるような、そんな時間がありますように。

 

 

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です