「家から一歩も出たくない」「食欲もない」
そんな、生きているだけで精一杯だった時期が、私にはありました。
人生が音を立てて崩れ、心も体も動かせなくなったとき。
あの頃の私は、何をしても虚しく、自分の存在すら重く感じていたのです。
けれど、「このまま終わってたまるものか」と、心のどこかで灯っていた小さな意志だけは残っていました。
私がそのときに選んだ、たった一つの行動。
それは、「ただ歩くこと」でした。
目次
どん底の中で見えた「最初の一歩」
もうこれ以上ないというほど、落ち込んでいたあの頃。
仕事も人間関係も失い、毎朝目覚めるたびに涙が出そうでした。
そんな中、ふと浮かんだのが「何か今までやらなかったことをしてみよう」という考え。
お金も時間もかからず、ただ外に出て歩くだけ。
「それならできるかもしれない」と思い、最初の一歩を踏み出しました。
冬の風が教えてくれた感覚
最初に出かけたのは、1月の寒い朝。
家の近くのスーパーまで、ゆっくりと歩いてみたのです。
風は冷たくて、顔に触れる空気がピリッと刺さるようでした。
けれど、冬の匂いや、乾いた田んぼの土の香り、遠くで鳴く鳥の声など、長い間感じていなかった「自然の存在」に気づかされました。
今まで、車で通り過ぎていた道。
そこにこんなにも多くの音や色や気配があったことに、私は心から驚いたのです。
歩いて気づいた、ありがたさと発見
毎日ただ生きるだけで精一杯だった私にとって、歩くことは新鮮な体験でした。
歩きながら、いろいろなことを考えました。
「なんで、私はこんなに苦しいんだろう」
「どうして、すべてを失ってしまったのだろう」
そして気づいたのです。
“今、歩けている”ということが、どれほどありがたいことかということに。
自分の足で動ける体がある。
外に出る勇気が少しでも持てた。
人とすれ違って、挨拶を交わすことができた。
それらの小さなことが、当たり前ではなかったのだと、歩くことで少しずつ思い出していきました。
変わったのは「すべて」ではなく「少し」
もちろん、歩いたからといってすべてが劇的に変わったわけではありません。
仕事が急にうまくいくようになったわけでも、心の痛みがすぐ癒えたわけでもありませんでした。
でも、「少し前向きになれた自分」に、私は気づきました。
「もしかしたら、私はこの状況を抜け出せるかもしれない」
そんな小さな希望の芽が、心に生まれたのです。
歩くことがくれた4つの効果
私にとって「歩くこと」は、心のリハビリのようなものでした。
ほんの少しの距離を、ゆっくりと。
そうして続けていくうちに、こんな変化が起こりました。
1. 気持ちが前向きになった
歩くことで呼吸が整い、心が軽くなっていくのを感じました。
ふとした瞬間に空を見上げたり、笑っている人を見てホッとしたり。
そんな自分の変化が嬉しかったです。
2. 季節や自然を感じられるようになった
風の冷たさ、花の香り、葉の色づき。
五感が少しずつ戻り、世界が少しずつ色づいていく感覚を味わいました。
3. 頭の中が整理された
悩みでいっぱいだった頭の中が、歩くことで少しずつ落ち着いていきました。
「考えすぎていたな」と冷静になれることも増えました。
4. 誰にでもできる、小さな行動だった
お金もスキルも不要で、ただ外に出て歩くだけ。
この“シンプルな行動”こそが、再生の第一歩になったのです。
まとめ:新しい一歩を踏み出すあなたへ
私の経験は、ほんの小さな物語かもしれません。
でも今、同じように心が折れそうな日々を過ごしている方がいるのなら、こう伝えたいのです。
「無理に頑張らなくてもいい。ただ、今までと違う何かをしてみてほしい」と。
私にとっては、それが「歩くこと」でした。
最初は数分でも構いません。ゆっくりでいいのです。
外の空気に触れて、少しだけ視線を上げて。
そうして踏み出したその一歩が、いつかあなたを救う希望になるかもしれません。
小さな一歩が、人生の流れを変えていく。
あなたの歩みに、静かな光が差し込みますように。